はざまいちじくが美味しいと言われるのはなぜか?
その自然的な要因に迫るシリーズ第3弾!
今回は最後の3つめをご説明します。
引き続き進行は対話形式で進めさせていただきます。
やり取りが煩わしい方は目次よりまとめ項目へジャンプしてください。
目次
プロローグ
ゆき
園長!やっと3回目が来ましたね。おつかれ様です‼
あれ?吹き出しのスタイルが変わってますね。
前回の記事をupした後にスマホで読んでみると、吹き出しの幅が狭くて読みづらかったんですよ。
今度は読みやすくなれば良いなぁと思います。
ゆき
1回1回の経験が成長への糧ですね。園長さん♪
まぁ、私のイラストは結局ショーパンしか使ってくれなかったですけどね。
私はロングの方がかっこいいと思います!
クーラーが無い農家住宅
ゆき
それにしても羽間って朝とお昼の寒暖差が大きくないですか?
朝一番の作業とお昼近い作業とでは服装調整が難しいです。
そうですね。小さな香川県ではありますが、羽間は内陸の方にあるので、夏でも朝方の気温低下はまずまずあります。
朝昼の寒暖差が大きいということですね。
次の比較グラフを見てください。
これは海に近い高松と内陸寄りの滝宮との気象データ比較となります。
昨年の、はざまいちじくが出回る9月の日ごとデータを出してみました。最高気温と最低気温との幅を緑の矢印で示しています。
一日の寒暖差が内陸の方がより大きいことがわかりますね。
ゆき
ほえー、グラフでみると一目瞭然ですね!
最高気温は同じくらいだけど、最低気温が常に2℃くらい違っているんですね。
滝宮観測所は羽間から東の方にあって、県立の農業経営高校がある辺りになりますね。
ここの生徒からアルバイトの応募があるくらいの距離で近い方です。
ゆき
一緒に働けたらよかったのになぁ。
羽間の夜は夏でも涼しい風が吹いてくれて、窓を開けると心地よいですよ。
近所の農家さんなんて未だにクーラーが無いというお宅もありますよ。
ゆき
へ?
この暑さですよ??すごい。。。
「窓を開けときゃ大丈夫」だそうです。。
少し前まではそんな農家さんが珍しくなかったそうですが、さすがに最近は減っているみたいですね。
内陸にある羽間の寒暖差をより大きくする要因
ゆき
全国的にみても、海から離れた内陸の地域は寒暖差があって野菜や果物の名産地になりやすいって学校で先生が言ってた気がします。
よく授業のお話を聞いていますね!
そういった農村地帯には共通していることかもしれないのですが、羽間は前回触れたように土器川と山に挟まれた地域で、宅地開発がそこまで進んでいないというのも一つの要因として考えられますね。
ゆき
おうちが少なくて、遠くの農家さんのご自宅が見えてしまいますもんね。
そうなんですよ!だからプライバシーがあんまり無くて、、、ではなくて、
コンクリート建造物はもちろん少ないですから蓄熱効果も少ないですし、木造住宅さえ少ないですから冷気が回りやすいように感じています。
ゆき
あとは、もしかして土器川と山が近いことも影響してますか?
いいですね。山が近いことによって、夜間気温が下がりやすいでしょう。
実際に測ったわけではないのですが、自転車で平地の方から山の麓に近づくと冷気が肌を伝ってきます。
その冷気を土器川沿いを吹いている風が循環させている可能性はありますね。
この辺りの風向きは、ちょっとした場所の違いによっても吹き方が違っていて複雑なのですが、川と山との位置関係が影響し合っているのは実感しています。
山と川が織りなす寒暖差ガチャを引いたのかもしれませんね♪
ゆき
ガチャの使い方よ…
寒暖差がいちじくの味に与える影響
ゆき
あの、すっごく初歩的な質問なんですけど、
寒暖差が大きいとどうしていちじくが美味しくなるんですか??
いい質問ですね。ここは押さえておかないといけませんね。
3つのステップにわけてご説明しましょう。
朝晩の冷え込みが重要
1つめに重要な点は、夜間温度の低下です。
これまで述べてきたように、羽間という地域特有の地形条件によって、夜から朝方にかけてぐっと気温が下がるわけです。
これが果実糖度の上昇に有利に働きます。
夜間温度が低いと植物体の呼吸量が減る
2つめに押さえる点は、植物体の呼吸についてです。
呼吸の化学式は
C6H12O6 + 6O2 + 6H2O → 6CO2 +12H2O
でしたね。
ゆき
あー、赤線が引かれてる!
テストに出るやつだ‼
グルコース(ブドウ糖)!
いいですね!お勉強ができる子‼
化学式にもあるように、呼吸は糖を消費しますよね。
植物体の呼吸は、気温が高いと活性化すると言われています。
ある農大の先生は例えとして、
「暑いときは皆さん、自然と息が上がるでしょう?植物も同じです。」
と講義でお話してくれましたが、そのようなイメージを持っていただけたらと思います。
ゆき
夏場に運動するとすぐにばてちゃいますもんね。
逆に言えば、気温が下がると呼吸量が減るということですね!
呼吸量が減ることで光合成で蓄えた糖分の消費が減る
3つめ。
太陽が沈んで光合成をしなくなった夜の時間は、呼吸で糖を消費している状態となります。
そこで夜間温度が下がってくれると、夜温が高い場所に比べて呼吸量が抑制されます。
そうすると日中に光合成で蓄えた糖の消費を抑えられるという考え方です。
よって、糖分が植物体により多く残る。ということは?
いちじくが甘くなる‼‼
というわけです。
ゆき
だから寒暖差の大きい地域は野菜や果物の名産地になりやすいんですね!
昼夜温度の差は強く働き、夜温が低いほうが糖度は上がる傾向にあります。(略)昼間にせっせと貯めこんだ糖類は呼吸で常に消費される(略)呼吸は温度が高ければ盛んですから、夜に温度が低くなれば呼吸も低く、それだけ貯めこんだ糖の消費が少なくなる
上記、日本植物生理学会HPより抜粋
もっと付け加えると、だから早朝の気温が低い時間帯に収穫しないといけない理由のひとつとなります。
昔のいちじく農家が、「夜中の2時に起きて、ヘッドライトを照らしながらいちじくを収穫していた」というのは経験則として朝方に収穫した方が甘いということが知られていたからなんですね。
ちなみに、昔のいちじく農家で育った方々は「小学生の頃に2時とか3時にたたき起こされて収穫を手伝わされた。あの辛かった時期を思い出してしまうから、いちじくなんてやりたくない」と口を揃えておっしゃってますね。
現在は保冷庫の普及でそんな無茶するところはほとんど無いと思いますが。
農家の子どもは大変だったんですねぇ。。。
まとめ(手っ取り早く内容を知りたい方はこちらから)
- 内陸にあって山と川に挟まれた農村地帯にある羽間は一日の寒暖差が大きい。グラフ参照。特に夜温が下がる。
- 果実の収穫期に夜温が下がると果実の糖度が上がる。
- よって、はざまいちじくは甘くなる。
またまた短くまとまりましたね!
8000文字超えでシリーズ完結!
1年間企画を温めた甲斐がありましたねv